2022-0307 ねこの約束閉店にあたって

このたび、いぶき福祉会の運営する「ねこの約束」を、2022年3月29日(火)をもって閉店することといたしました。長年にわたってご愛顧くださり、誠にありがとうございました。言い尽くせぬほどの感謝とともに、ご報告申し上げます。

「ねこの約束」は、2010年4月6日に、JR岐阜駅アクティブG 2階(現地)にオープンいたしました。招き猫マドレーヌとかりんとうを知り、私どもの活動に強く関心をもってくださった方が、アクティブGを運営する森ビル都市企画さまや岐阜県の担当部署にご紹介くださったのがご縁の始まりでした。自分たちのお店すらもったことがなく、しかも岐阜駅改札至近の好立地という夢のような話。はたして私たちでやっていけるのだろうか?分不相応なのではないだろうか?そんな戸惑いもありました。
その一方で、いぶきの仲間(利用者さん)たちが、暮らしていけるだけの給料を作っていきたい。私たちの活動をもっと伝え、障害のある人だけでなく、誰もが安心して暮らせる地域づくりをすすめていきたい。いろいろな人が、かけがえのない存在として認められるようなつながりを紡いでいきたい。そんな未来を描いた時、思い切って新しい窓をひらき踏み出すことにした一歩でした。

それから12年がたとうとしています。まさかこれほど長く続けることができるとは夢にも思っていませんでした。
仲間たちは、いつも「ねこの約束」に納品にいくことを楽しみにしていました。自分たちの作った商品がきれいに並べられ、それをお客様が手にとってくださることが嬉しくてたまりませんでした。保護者や職員にとっては自慢のお店でした。日常の暮らしの中で、「ねこの約束知っているよ。時々寄るよ」と聞くと、自分たちのささやかな活動が社会で認められているような気持ちになりました。岐阜県内のみならず、全国からたくさんの福祉関係者も訪れてくださりました。小さなお店を嬉しそうに見渡し、希望をみつけ、このお店よりもっともっと素敵な場所が日本中に生まれていきました。この小さなお店を、我がことのように大切に思い、誇りとし、希望としてくださった方が本当にたくさんおられました。そして障害のある方や、いろいろな生きづらさを抱えて生きる方のことを知り、思いをはせ、ともに暮らす地域の仲間として一緒に考えてくださりました。

本当に大切なことを学び、かけがえのない経験ができました。
数えきれない方々の笑顔が浮かびます。
本当に、ありがとうございました。
心よりお礼申し上げます。

今回の閉店は、コロナ禍に抗いきれずに苦渋の決断をしたというわけではありません。実はかねてから、「ねこの約束」の第2章として、もうひとつの願いがありました。エキナカとは別に路面店があれば、車移動や街中で暮らす方にも気軽に立ち寄やすくなるかもね。もう少し広い空間があれば、仲間たちがお店でも活躍できるね。「販売」にこだわらず、仲間たちの営みが垣間見れたり、ここを気に入ってくださった方同士がつながる空間だったり、何もせずにただいることが許されたりする場所もきっと居心地がいいよね。そんな場所を、「ねこの約束アネックス」として描いたりしていました。

それでも、コロナ禍で負った痛みは忘れません。
エキナカの人の流れはなくなりました。仲間が楽しみにしていた納品も、職員だけで行くようになりました。売り上げも激減しました。ねこの約束の収益は、仲間の給料に直結します。だからこそ必死で回復させようと尽力する職員の姿には胸が熱くなりました。私たちの誇りです。だからこそ、なんとかカバーしようと取り組んだ3度にわたるクラウドファンディングへのご支援は本当にありがたいものでした。仲間の給料を下げることなく、なんとかのりきることができているのは、ご支援くださった皆様のおかげです。

皆様との対話を通じて感じたことがあります。つながりが減って、つながりたいという思いがどんどん強くなりました。そして人と人のつながりを紡ぐという私たちの得意技の出番じゃないかと思うようになりました。特別なことはできないけれど、当たり前の日常の灯を守っていくために、ほっとすることや、ありがとねと伝えたくなる機会をたくさん作っていきたいと思うようになりました。
「販売」だけから抜け出して、人のつながりを生む場所に。いろいろな人が出会い、対話がうまれ、ワクワクすることが始まるような、ねこの約束をそういう場所にパワーアップさせたいと思います。
それがコロナ禍から、私たちが学んでいることです。

具体的な計画はまだまだこれからです。正直、資金的な余裕もありません。福祉の求人難は拍車がかかるばかりです。社会福祉法人の使命として取り組まなければならない課題は山積しているので、最優先にできない事情もあります。ただ、なるべく早く皆さんをご案内できるようにしたいと思っております。夢見たいな話ですが、もしいろいろな人ができることを持ち寄って一緒に作るプロジェクトにできたら、本当に素敵だと思います。

最後に、ご案内がございます。
2022年3月29日(火)までの間は通常営業をしております。感謝の気持ちをこめた企画も実施したく、追ってご案内いたします。どうぞお楽しみになさってください。また、勝手ではありますが、閉店後もひきつづき機会があればお求めいただきたいというのが本音です。JR岐阜駅では、「ねこの約束」向かいの「THE GIFT’S SHOP」さまでお取り扱いいただけることになっています。いぶきのネットショップもご用意しております。おつきあいいただければ何よりの幸いと存じます。

長文にもかかわらずお目通しくださりありがとうございます。
私たちは、微力ではありますが、100%前向きにこれからも頑張ります。誠実であり続けたいと思います。「ねこの約束 JR岐阜駅店」は閉店いたしますが、どうか今後ともよろしくお願いいたします。12年間ことあるごとに心を寄せてくださり、足を運んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
末筆ながら、一日も早く穏やかな日常が皆様のもとに、世界中の方々に戻ることを祈念しております。

いぶき福祉会の利用者、職員の顔を思い浮かべながら
法人本部専務理事 北川雄史