後援会の通信に掲載をはじめることにしました
この4月1日から障害者自立支援法が施行されました。それから2ヶ月たらず。こ
の文章がみなさんのお手元に届き始める頃、5月23日は、いぶき福祉会の仲間に
とって、自立支援法が「現実」として現れる大きな節目の一日になります。福祉会の
各施設では、毎月の集金業務(諸会費の集金代行を含む)を、これまでの現金集金か
ら銀行口座振替に全面的に切り替えました。その初めての振替日が5月23日です。
この日、いぶき福祉会全体で200万円に近い金額が仲間の口座から引き落されま
す。ひとりひとりの金額は、施設の利用形式や回数、制度上の減免の該当具合など、
個々の状況によって大きく異なるので一概に比較できません。数千円から3万円を超
える方までまちまちです。ただ、一般的には2万5千円程度を今までより余計に預か
ることになることは事実です。中でも大きくのしかかっているのは、このたび初めて
盛り込まれた、施設利用料の1割の定率負担と食費の自己負担です。支援法の現実
は、まず金銭的な「痛み」として押し寄せてきました。そしてその「痛み」は、これ
までの生活をこれまでどおり続けているだけで、延々と続いていくことになっていま
す。
一年前のちょうどこの日、私は金華山のふもとで、青空を見上げながら、まっすぐ
にのぼる煙を目で追っていました。第二いぶきで共に過ごしたひとつのかけがえのな
い命が、空に帰ろうとしていました。彼の冥福を祈りながら、こういうときにはいつ
も考えることに苦しんでいました。「私たちは、彼に十分なことをできただろうか・
・・。もっともっとできたんじゃないだろうか」。
毎日いぶきに来て、ほかの仲間とともに楽しみ、仕事もし、いろいろなことを乗り
越えながら願いをかなえていく。そんな人生をともに作り上げていくことを、私たち
は常に大切にしてきました。しかし、その前提には、いぶきに行って仲間と会いた
い、仕事もしたいという仲間が、お金がかかるからという理由でいぶきにいくのを控
えたり、ためらったりするなんていうことは全く想定もしていませんでした。我が子
が楽しんで毎日通うことができるのを、心から喜んでいた保護者の方から欠席の電話
で、あんなに申し訳なさそうな声を聞くとは思いもしませんでした。
文字通りとるならば、障害者の自立を支援することを大義としたこの法律。でも仲
間たちの生活が大きく、確実に変わっていっています。ひとりひとりが悔いを残さな
いようにと生きているのに、それを許さないかのようなこの波は、仲間だけではな
く、家族、いぶきの職員、そして社会全体へも押し寄せていきそうです。そんな不安
をエピローグとしてお伝えしつつ、これからシリーズで「今、いぶきでおこっている
こと」そして「私たちの負けない姿」を飾らずにお伝えしていきたいと思っていま
す。(第二いぶき 北川雄史)